造形室ノート

制作者が知りたい著作権のハナシ

2015.10.19

制作者が知りたい著作権

週末、ウェブクリエイターズ高知(WCK)の勉強会 “制作者のための「よくわかる著作権」” に参加してきました。

この勉強会、きっかけは東京五輪エンブレム問題に揺れた8月の、Webデザイナーさんのとあるつぶやきから。

エンブレム問題以降、様々な「パクリ疑惑」が取り沙汰されたり、制作者の信用やデザインの価値について問われるような場面が目につくようになりました。

ものづくりに関わる以上、無関係ではいられない著作権の話。
法律によって制作物の何が守られるのか、意図せず誰かの権利を侵害していないか。きちんと知っておきたい、これってどうなんだろう?と思いつつ、私もなかなか一人では勉強しきれない内容でもありました。

今回、地元のWeb制作者によって運営されるWCKならではの非常に身近でためになるお話をたくさん聞けたので、復習も兼ねてここに共有したいと思います。

著作権 “基本のキ”

法律の専門家である弁理士と弁護士の先生を講師にお迎えして行われた勉強会。まずは弁理士の上岡将人先生から著作権をはじめとする知的財産権について説明していただきました。

著作権・特許権・商標権

著作権および特許権、商標権とはざっくりまとめると以下のようなものです。

種類 保護される内容 手続等
著作権 文芸、学術、美術、音楽、動画などの創作物 手続き不要
創作と同時に発生する
特許権 新たに発明された物、方法、技術 要出願
商標権 文字、図形、記号、形状やそれらの結合体
商品やサービス名、ロゴマークなど
要出願

著作権はあくまで創作的な表現に対して発生するものであり、アイデアや処理の流れ、誰が表現しても同じような一般的なもの、創作性のないものについては対象にならないということでした。

したがって、商品やサービスの名前やキャッチコピー、自社の技術、ノウハウを保護したい場合には、特許権や商標権、意匠権などを申請して登録することで守ることができるそうです。
これらの「権利化」の手続きを代理して行ってくれるのが弁理士さん、登録後にトラブルが起こった場合、権利を守るために戦ってくれるのが弁護士さんなのです。

パクリ疑惑のポイントは「依拠性」

昨今の問題で気になるのは、「似ている=パクリ」なのか、すなわち著作権の侵害にあたるのかどうかです。
これについて先生が教えてくださったのが「依拠」の有無という観点でした。簡単に言えば、元の著作物を知っていて真似したかどうか、ということです。つまり、知らずに偶然似てしまった場合には、どんなに類似性があろうと著作権の侵害にはあたらないということです。

しかし依拠性がないこと、知らなかったことを証明し、かつ納得・理解してもらうのもなかなか難しい話だと感じます。物を生み出す人というのは日々様々なものからインスピレーションを受け、膨大な量のインプットをしているのが常です。元の著作物をどこかで目にしていたとしても、それを意図的に真似するのと、制作者の血肉となって表現に還元されるのとには大きな隔たりがあるはずです。けれどそのグレーゾーンを判定することなど誰にもできないからです。

著作権を守るための法的措置

続いて弁護士の本澤友彬先生から、著作権が侵害された場合の法的対抗策について、具体的な事例を交えながら解説いただきました。

自分の著作物が他人に無断で使用(複製・改変等)されていた場合、著作権の侵害として次のような法的措置がとれるそうです。

示談→調停→訴訟
著作権が侵害されたときの解決方法

示談、調停、訴訟を通して、侵害行為の差し止めを要求したり、損害賠償の請求を行ったりできるということです。

うっかり侵害…制作者にも責任アリ!

勉強会の後半はパネルディスカッションとして、2人の先生と参加者との質疑応答タイムがたっぷり設けられていました。
“制作者のための” 著作権勉強会ということで、制作会社のディレクター、デザイナーをはじめ、エンジニア、イラストレーター、カメラマン、企業のWeb担当、地元メディアの発信者などなど、様々な立場の方から身近な疑問が投げかけられ、白熱したディスカッションとなりました。たくさん出た質問の中からいくつか取り上げてみます。

Q. クライアントから提供された素材が著作権を侵害していた場合、その責任はどこにある?

クライアントから提供された写真やイラスト、テキストなどの素材が著作権を侵害するものであった場合、それを使って制作した側にも責任が発生します。先生からこの回答があった瞬間、会場中に「あぁ〜」という深いため息がこだましました。

制作者がとれる予防策としては、
① 素材を受け取る際に出処をよくチェックすること
② 責任の在り処を明確にするために、契約書ややり取りの記録を残すこと
などが挙げられました。

Q. 新聞や雑誌、TVなど他のメディアで自分が紹介されたものは自由に使って良い?

サービスや商品、活動がメディアに取り上げられたら、それを周りに伝えたいというのは誰もが思うところだと思います。
しかし、新聞の切り抜きを自分のメディアに貼り付けたり、画像・動画を無断で転載することは基本的にNGということでした。

使用したい場合には、新聞社や出版社などの出典元(著作者)に許可を得ることが必要だそうです。ただし、「高知新聞に掲載されました!」などのテキストで公開する分には問題ないということでした。

Q. 写真やイラストなどを2次利用するのはOK?

紙媒体で使った写真やイラストなどをWebサイトでも使用したいと要求された場合、追加の使用料を請求することはできるのでしょうか。先生方の回答は「著作権がどこにあるかによる」というものでした。

著作者がもつ権利には、譲渡できない一身専属の著作者人格権と、契約によって譲渡可能な財産権とがあります。

著作権(財産権)は契約によって譲渡可能。著作者人格権は譲渡できない。
契約による著作権(財産権)の譲渡

したがって、発注者に依頼されて制作した著作物の著作権(財産権)は、契約によりクライアントに譲渡されるという形になります。
ただし、契約時に示された目的(例・紙媒体での利用)の範囲を超えての使用を求められた場合には、新たにその契約(例・Webサイトでの利用)を結ぶことで追加の料金を請求できるということです。

トラブルを防ぐためには、契約時に使用の範囲を確認すること、新たに利用する際にきちんと許可を得ることが大切なのですね。

結局は社会常識

質疑応答タイムでは、その他にも「コードに著作権はあるか」などWebクリエイターならではの質問も飛び出しました。先生方の見解としては「コード自体よりも、その成果物(見た目)が問題視される」ということでした。
また、弁護士や裁判官も世界の全ての物事を知っているわけではなく、専門家に意見を求めることはあれど、あくまで一般的な常識の中で判断されるというお話が印象的でした。

勉強会には様々な立場の方が参加されていたので、それぞれの世界での「当たり前」と、それ以外の世界での「当たり前」のズレを垣間見ることができました。ある業界や地域では慣習的に行われていることが、他所ではトンデモなことだったり、そこでは皆がこだわっていることが、側から見れば無価値なものだったり。

明確な線引きが難しいものづくりの世界だからこそ、お互いの権利を尊重すること、各々のリテラシー、コンプライアンス意識を高めていくことが大切なのだと思いました。

もっと勉強しよう

気になっていた制作にまつわる著作権の話がたくさん聞けて、とても有意義な勉強会でした。でも、まだまだ詳しく知りたいこと、考えたいことがたくさん出てきました。
この記事を書くにあたり、図書館やネットから、とっつきやすくて良さそうなものをいくつかピックアップしてみました。

制作現場でありがちな56の疑問について、解りやすい図版とともにQ&A方式で解説されていて、とても良い本です。巻末には押さえておきたい10の判例や、契約書のサンプルが付録として掲載されています。

2015年4月に発行された本で、表紙のイラストに象徴されるように、ネット上での創作活動に関連する旬な内容が充実しています。

中小・ベンチャー企業のための知的財産支援ガイド
出典:特許庁

県立図書館の中小企業支援コーナーでは、特許庁の「中小・ベンチャー企業のための知的財産支援ガイド」パンフレットが配布されていました。自社の技術、ノウハウ、ブランド、デザインなどの知的財産を活かしたい・守りたいときに役立つ情報がコンパクトにまとめられています。これらの権利の取得には少なからず費用がいるものです。無料の相談窓口や、こういった支援策があるのは心強いですね。

▼ 著作権について、知りたいことを選んで読めるリンク集。

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