造形室ノート

CSS Nite 初登壇の舞台裏

2015.12.05

11月21日に開催された CSS Nite in TOSA, Vol.3「作業効率を上げるためのWebデザイン実践」というセミナーイベントで、人生初の登壇なるものを経験させていただきました。
ショートセッションということで15分お話させてもらったのですが、自分史上最もながい15分になりました。

ポジショニング!

夏の夜のノリで

事の発端は8月のWCKの懇親会でした。
WCKとはウェブクリエイターズ高知の略で、普段は月に1回参加者が学びたいことを学ぶための勉強会を開催しています。CSS Nite in TOSA はそんなWCKの年に1度の大イベント。去年の CSS Nite in TOSA, Vol.2 で初めて(受講者として)参加し、Web業界のオープンでフラットな「勉強会文化」にいたく感銘を受け、そこからずんずんWebの世界へハマっていったのです。

そして今年の夏、WCKセミナー後の懇親会で「11月のCSS Nite でしゃべらない?」との話題が持ち上がりました。白羽の矢が立ったというよりは、地元枠での登壇者を広く募っているような状況でしたが、CSS Niteには上記のような思い入れがあったことと、会社に居た堪れなさを感じていたこともあり、「いいかも」というお返事をしていました。割と軽い感じのお誘いだったので、このときは私も「良い機会かもな〜」なんて気楽に構えていました。

スーパースターに囲まれて

そうこうするうち秋になり、そのまま正式に地元登壇者としてエントリーされ、他の登壇者も発表されました。今年の登壇者は私の他に3名。そのメンバーというのが、蓋を開けてみればとんでもなく豪華だったのです。

鷹野雅弘さん

まずは東京から、鷹野雅弘さん(株式会社スイッチ)。
鷹野さんといえば、今年10周年を迎えたWeb制作者のためのセミナーイベントCSS Niteの主宰者。2005年のスタートから500回近くの関連イベントを通じて、日本各地にセミナー文化を根付かせています。つい先日には、著書『10倍ラクするIllustrator仕事術』のプロモーションとして、全国47都道府県でセミナーを行うという偉業を達成された、いわばセミナーのスペシャリストなのです。
今回のCSS Nite in TOSA, Vol.3ではPhotoshopのセッションを担当して下さいました。

高橋としゆきさん

続いて愛媛からは高橋としゆきさん(GRAPHIC ARTS UNIT)。紙媒体からWebまで幅広く手がけるグラフィックデザイナーとして活躍されるかたわら、『Illustratorプロフェッショナルの教科書』をはじめ、たくさんのデザイン系の書籍を執筆されています。見てください、この目まいのするような著書一覧ページ
アドビの「Ai-1グランプリ」の初代チャンピオンでもある高橋さんはIllustratorのセッションを担当して下さいました。

窪木博士さん

そして岡山からは窪木博士さん。パッケージやグラフィックのデザインを経て、現在はSIerにてウェブやエンタープライズ系システムのUIデザイン、設計やグラフィック・マークアップなどを担当されています。こちら窪木さんの著書なのですが、ビックリ! 全部持ってます&めちゃくちゃお世話になってます!
今回のCSS Nite in TOSA, Vol.3では最近話題のツール、Sketchのセッションを担当して下さいました。日本ではまだまだ解説書の少ないSketchですが、窪木さんは個人で電子書籍『Sketch 3の基本。』をリリースされています。いわば、Sketchのパイオニア的存在なのです。

気づけばこんなスーパースターに囲まれていたのです。
スーパースター×3、プラス私。とんでもない事態です。

しかもお題が「作業効率を上げるためのWebデザイン実践」ということで、Photoshop×鷹野さん、Illustrator×高橋さん、Sketch×窪木さんという、おそらく今、日本のWebデザインツールを語る上でこれ以上ない最強の布陣です。
そんな中で、私のようなものが、何をお話しすればいいのか。冷汗脂汗タラタラの日々がはじまりました。

ビジターシール

テーマと裏テーマ

スーパースターに囲まれて、私が小手先のテクニックを語ったところで仕方がありません。実績を語ろうにも、会社を円満じゃない感じで辞めたばかり。スライドを使ったプレゼンをすること自体、7年前の卒論発表(デザインのデもない時代)以来ですから、巧みな話術で切り抜けることも望めません。

そんな訳で、今回のCSS Niteは「自分なりのゴール」を設定するところからはじめました。

まず、セッションのターゲットとして「去年の自分」を想定しました。
地元の企業や団体のWebデザインに携わっていて、独学・手探りで周辺技術を学んでいたけれど、もっとスキルアップしたい人。その道のエキスパートではなく、学びの道案内を求めているような人です。そんな人が、イベントを通してモチベーションをアップさせたり、勉強会の仲間になってくれることをひとつの目標にしました(去年の私のように)。

また、自分の立ち位置として「続くセッションへの期待感を高める前座的存在」を目指しました。鷹野さんのアドバイスで、出演順もトップバッターに変更してもらいました。
去年の振り返りとして、内容が最先端すぎて、今の自分の仕事では使いにくそうだな…という置いてきぼり感を感じた経験がありました。そこで、今回参加される人みんなに、セミナーの内容を身近なもの、「自分ごと」に感じてもらえるような工夫をしました。
具体的には、セミナー全体のテーマの「作業効率を上げる」ことは、地元高知のWeb制作者にこそ必要なスキルであることと、その結果もたらされるメリットを強調する構成にしました。

つまり、「効率化の必要性と目的」をテーマにすることで、「続くセッションへの関心を高め、セミナー全体の満足度アップさせること」を裏テーマとしたのです。
私のセッションでは、お役立ち感よりもモチベーションアップやワクワク感を重視し、その盛り上がった気持ちを、続く最強のセッション×3に受け止めてもらう。結果、イベント全体のお役立ち感や満足度がアップすれば、自分なりのゴール達成!という訳です。

つらつらと小賢しく書きましたが、このポジショニングは今回の壁を乗り越えるための決死の策でした。初めての登壇で、丸腰の自分がスーパースターに並ぶことを目指したら、壇に上がる前に心が折れるのは目に見えています。裏テーマとは、自分をなんとか奮い立たせるための拠り所だったのです。

登壇は強制成長装置である

CSS Nite in TOSA 会場の様子

10のインプットを1に込める

以前このブログの編集中記にも書きましたが、人様の前でお話をしようと思うと、自然とその周辺のインプット量が増えます。

編集中記 #01
in 造形室ノート

伝えたいメッセージは決まっていても、それをより分かりやすく伝える方法はないか、よりふさわしい事例はないか、今回も様々な本や記事を読み漁りました。すると今度は、伝えたい情報がどんどん膨らんでいきます。もともと自分の興味のある分野ですから、本筋から広がり、あれもこれも盛り込みたくなってしまいます。
けれども持ち時間は15分。次は仕入れた情報を、伝えたいメッセージに沿って絞り込む作業になります。何をスライドに掲載して、何を「しゃべり」に盛り込むか。

結局仕上がりは既知の内容ばかりになるとしても、この「いったん広げて絞り込む」という作業は、充実した発表のためには非常に有効だと思います。たっぷりと栄養を与えてから余分なものを削ぎ落とすことで、より芯の強いメッセージが仕上がるのです。
特に今回の私のように、初めての舞台で緊張してしまう場合でも、この芯さえしっかり持っていれば、ブレは抑えられると思います。

プレゼン覚書

ここで今回のプレゼンを通して学んだことを書き留めておきます。

書き言葉としゃべり言葉は違う
頭の中にあることを、箇条書きでない文章の形にしておくことは、スムーズなプレゼンのためには有効だと思います。けれど、書き言葉としゃべり言葉は違うという点には注意しなければなりません。文章なら理解できる内容でも、声に出して読んでみると、違和感を感じることがあります。以下のようなポイントをチェックしておきましょう。

コア・メッセージだけ守ればOK
私は始め「しゃべり原稿」を用意していたのですが、上記の「書き言葉としゃべり言葉問題」に悩んでいたところ、前日に窪木さんにアドバイスをいただきました。それは、スライドごとのコア・メッセージさえ伝えられたらOK、という懐の深いものです。言い回しの細かい部分なんて本番でどうにも変わってしまうもの。それに気を取られるより、最低限伝えるべきことをしっかり守れれば良い、ということです。
原稿の丸暗記を再生すれば、間違いはないでしょうが、それが一番伝わる方法かと言えば疑問は残ります。それに丸暗記には、飛ばしてしまう・真っ白になってしまう、という危険性もあります。
一方的に機械的にしゃべり通すよりも、スライドとコア・メッセージを元に自然な流れでお話できた方が、緊張感も少なく良いプレゼンができると思います。そのためにも、前の項での「メッセージの芯づくり」は大切なプロセスといえます。

ディスプレイの設定をしておこう
ディスプレイやKeynoteの環境設定、デスクトップの整理などは事前にチェックしておきましょう。リハーサルでアワアワ動転してしまいました。そっと助けてくださった高橋さん、本当にありがとうございました…!

CSS Niteの出演者マニュアル
このマニュアルを読めただけでも、イベントの作り方、登壇への意識などとても勉強になりました。

セミナー登壇者が知っておくべき情報がまとまったページがスゴい! 作成者のCSS Nite 鷹野さんに聞いた|Web担当者Forum
鷹野さんのセミナー作りへの思いがまとめられたインタビュー記事。

お客さんは敵ではない
WCKから登壇者が正式に発表された際、夏の懇親会で一緒だった方が「あの流れで本当にやることにしたがや。すごい! 頑張って!!」と声をかけてくださいました。前に立ってしゃべるのだから、下手なことはできない!と一人でガチガチに壁を作っていたのですが、この一言でふっと気持ちが和らぎました。
お客さんは説き伏せるべき敵ではなく、興味をもって来てくれる味方なんだ、応援してくれる人もいるんだ、と心強く感じられたのです。興味をもってくれたお客さんに楽しんでもらえるようにしよう、ひとつでも何か持ち帰れる内容にしよう、という意識の変化は大きな心の支えになりました。

すごいプレゼンはアトラクション
当日の会場アンケート結果を共有していただいたのですが、鷹野さんのセッションの感想に「アトラクションのようでした」というコメントがありました。「Photoshopを持っていないけど面白かった」というものも(!)。
本当に、達人の皆さんのプレゼンというのは、スライドやデモ、身振り手振りの視覚情報と、耳から入ってくるトークの情報とが絶妙に織り成された、一種のエンターテイメントのようなものなのです。伝わる、分かるを追求した表現・デザインの一分野と言っても良いかもしれません。初めての登壇を通してその入口に立たせてもらい、奥深く、面白い世界だなあと感動しました。

人と深く出会える

こうしたイベントにスピーカーとして出演するメリットは、学びの面だけではありません。聴くだけの参加よりも、人と深く出会えることも大きなメリットの一つです。
今回、一緒に登壇させてもらった方々をはじめ、スタッフの皆さん、そして参加者の皆さんまで、たくさんの方とお話が出来ました。今までの私よりも、「しゃべった人」として、覚えてもらいやすくなったのではと思っています。
もともと知り合いだった人でも、会場に来てくださったことで、私からの親近感はめちゃくちゃアップしました。一方的ではあるけれど、これからの関係性をよりハッピーなものにしたい気持ちが湧くのは、幸せなことだと思います。

飲食スペース
CSS Nite in TOSA, Vol.3 では飲食コーナーが充実していました。

さいごに

長くなってしまいましたが、本当に長く、実りある15分でした。素晴らしい機会をいただき、お会いできた皆さまに大感謝です。

WCKのレポートページはこちら

この記事に掲載されている写真を撮ってくださったのは
HOOP Design の中野玄さんと notch の上野洋平さんです。ありがとうございました!

そしてホッと一息、かと思いきや、次のお誘いをいただいてしまいました!
ネクストステージは大都会・岡山WEBクリエイターズの年末スペシャルです。岡山を中心に、いろんな地域のいろんなお仕事の皆さんに出会えそうで、とても楽しみです。
フリーテーマの15分セッションということで、「紙から学ぶ! デザイン守破離」と題して、紙媒体からWEBデザインに活かせそうなポイントについてお話する予定です。12月12日土曜、ご都合のつく方は是非一緒に岡山に行きましょう!

岡山WEB年末スペシャル

TAG