遠くの街

山本明子「COLLAGE」展とワークショップ

2016.03.31 ,

山本明子個展「COLLAGE」

イラストレーターで画家の山本明子さんの個展「COLLAGE」が、高知市朝倉にオープンしたアート・スペース Equivalent にて、2016年3月24日〜3月29日に開催されました。

山本明子 個展「COLLAGE」

本展は山本さんにとって8年ぶり・5回目の個展。コラージュ作品群「TOY OF A JOY」を中心に、会場となった Equivalent の空間に合わせてセレクトされた作品が並びました。

ストイックなジャンク・アート

コラージュ作品群「TOY OF A JOY」は、「道に捨てられていた紙ファイルの山を、コラージュとして全部使い切る」ことをテーマに、2005年に制作されました。

コクヨ ロングレバーファイル
コクヨ ロングレバーファイル B4 12mm 120枚 青 フ-2304NB

作品を見るまで、紙ファイルってなんだろう? と思っていましたが、表紙が厚紙でできたファイルのことでした。
展の解説として、この紙ファイルとの出会いを描いたテキストが置かれていたのですが、通勤中に遭遇したアートの種を見過ごせない、何とかして持って帰りたいという作家魂が垣間見えるとても面白い読み物でした。

「コラージュ」と聞いてまず思い浮かべるのは、様々な印刷物や紙などを組み合わせて作られる混沌とした世界です。

コラージュ(仏: 英: collage)とは現代絵画の技法の1つで、フランス語の「糊付け」を意味する言葉である。
通常の描画法によってではなく、ありとあらゆる性質とロジックのばらばらの素材(新聞の切り抜き、壁紙、書類、雑多な物体など)を組み合わせることで、例えば壁画のような造形作品を構成する芸術的な創作技法である。
Wikipedia

雑多なテクスチャー、ノイズ、ミクスチャー感…ややもすれば「雰囲気アート」や「ヘタウマ」も成立させてしまうちょっと危険な技法、という印象があります。

しかし、山本さんの「TOY OF A JOY」でコラージュの素材になっているのは、件の紙ファイルのみ。色数は紙ファイルの持つ7色だけで、描き込みや作為的な加工なども一切ありません。
ひたすら形と構成に向き合って作られた作品群からは、力強く明るく、ストイックな格好良さが感じられました。

また、素材や技法を制限したからこそ「捨てられた紙ファイル」の素材としての面白さ__日焼けや使用を経てくたびれた感じや、留め具やインデックスの形、紙の厚みゆえの立体感__が際立っていたのも印象的でした。

自分が見たいものを作る

山本さんの作品作りに関して興味深かったのが、お客さんからの「作ること自体が楽しみになったりしますか?」の問いに「それはないですね!」と即答されていたこと。
制作の原動力になっているのは、とにかく“良い”ものが見たいという欲求で、見たいものがないから作っているそうです。

また、本当に良いものを見ると笑いがこみ上げてくる、と山本さん。表現をする上で最も重要だと考えているのは、この「笑い」の感覚だとか。「マヌケなものが出来てほしい、そういうものを見たい」と願いながら作っているとのことでした。
ただし山本さんの作品からは、狙って笑わせにかかっているような作為は感じられません。わかりやすい癒し系の舌触りやユーモアとも違います。山本さんの求める「笑い」とは、そういった簡単に手に入るものではなく、表現に真摯に向き合い尽くしたところに生まれるランナーズ・ハイのようなものかなと感じました。

山本明子「TOY OF A JOY」作品集
展示ごとに判型やデザインを変えて製本されている作品集

会場の入り口には作品ファイルも置かれていました。作家の作品ファイルといえば、クリアファイルに過去の制作物の写真を時系列順に綴じているものが多いですが、山本さんは展示ごとに作品集として製本されていたのが素敵でした。

ワークショップ「気持ちをコラージュしてみると?」

山本明子コラージュワークショップ

展示期間中にはコラージュのワークショップも行われていたので、参加してきました。

色と形で自由に遊ぶ

ワークショップは、自分の気持ちをオノマトペで表現して、それを形や色に描き起こしてコラージュで表現する、という内容でした。

まずはじめに山本さんから制作の流れの説明がありました。オノマトペの「オノ君」が登場する、イラストいっぱいの手描きの教材が良かったです。

山本明子コラージュワークショップ教材

説明のあとは、早速制作。「気持ち」という形のないものも、そわそわ、イライラ、ふんわり…など、オノマトペを使って音に翻訳することで、イメージがふくらみやすくなりました。

表現したいオノマトペとイメージが決まったら、次はそれに色と形をつけていきます。たくさんの色鉛筆や色紙の中から、参加者は自分の気持ちに合うものを自由に選んで、思い思いに手を動かしました。この、色がたくさんあってどれを使ってもOKという状況が、作る楽しさ・うれしさを何倍にもさせてくれました。

学生時代、コラージュにハマってたくさん作っていた時期があったのですが、今回久しぶりにやってみて、その楽しさを思い出しました。ずっと家の引き出しにしまっている色紙や画材も、たまには引っ張り出して、色や形で遊ぶ時間をまた作りたいなと思います。

スイーツ・プレート「オノマトペ」

Equivalent オーナー・深田名江さんによるスイーツ・プレート「オノマトペ」

ワークショップの後には、会場の Equivalent オーナー・深田名江さんによるスイーツ・プレート「オノマトペ」をみんなでいただきました。
ドリンクは Equivalent オリジナル・ブレンドのハーブティーで、ポットの中ではバラの花が揺れていました。ハーブの葉にパンチングを施した遊び心あふれるあしらいと美味しいおやつで、五感にたのしい贅沢な時間を過ごせました。

絵画教室「アトリエ・DEDE」

絵画教室「アトリエ・DEDE(でで)」

今回の展示とワークショップは、4月からスタートする山本さんの絵画教室「アトリエ・DEDE(でで)」の開講を記念したものでした。
教室はデッサン・ドローイングコース/作品制作コース/子供教室の3つが用意されていていて、それぞれ月に2回のカリキュラムとなっています。

特徴的なのは「作品制作コース」で、受講者が作りたいものに合わせて、テーマも画材も手法も自由に選ぶことができます。デッサン・スケッチなどの基本的な技術の有無に関わらず、何かを形にしてみたい人、表現したい人のためのコースです。

これについて、山本さんは次のように語っています。

日本の芸大・美大で学ぶためには、何はなくともデッサンが出来ないと入ることもできません。しかし、デッサンが下手でも素晴らしい作品を作る人をたくさん知っています。もっと多くの人にひらかれた美術教育の場を作りたくてこのコースをつくりました。

私も高校では美術部に所属していましたが、大学受験の頃、美大を受験する友人たちがデッサンに苦労している様子を見て「私には絶対無理だなぁ」と恐怖していた思い出があります。
けれど美術作品を見ること、作ることはずっと好きで、デザインを生業にした今でも、クライアント・ワーク以外のものづくりや、何かを表現することを求めている自分がいます。

大人になるにつれて萎縮しがちですが、手を動かして作ること、好きな色を選んで自由に描くこと、自分の中にあるものを身体を使って何かの形に表すことは、本当はもっと多くの人にとって楽しいことのはずです。
アトリエ・DEDEはきっと、そんな創作心を解放し、育んでくれる場になると思います。会場の Equivalent もとても居心地の良い空間です。春から何か新しいことを始めたい方、日常をしばし離れて創作の時間を持ちたい方にぜひおすすめしたい教室です。

山本さんの教室「アトリエ・DEDE」の詳細はこちらから
http://eqvlt.com/portfolio/art/

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参考リンク

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