とぼとぼくん

リテラシーとモラル

2016.11.27

ふとんの中からスマホで情報検索するとぼとぼくん

とぼとぼくん「……」

とぼとぼくんがふとんの中でスマホを触っています。何か検索しているようです。

「喉 異物感」
「背中 痛み」
「体重 減少」
「めまい 原因」
「うつ病 症状」

実際に3年前、私もふとんの中から検索していたキーワードです。
このところ、こうした健康医療関連の検索結果に異変が起きているようです。

心ないお金儲け

私がそのメディアを認識したのは、SEO専門家の辻正浩さんのツイートがきっかけでした。

かつて「死にたい」で検索したことのある身として、他人事ではないとショックを受けました。

検索ボリュームがあり、かつ問題解決欲求の強そうな健康医療系のキーワードをマネタイズに利用するモラルのなさ、本当に苦しんでいる人が読むとかえって悪影響を受けかねない内容を大手Webメディアが無責任に公開していること。
これらの問題点については、辻さんの Twitter モーメントにもまとめられています。

[死にたい] でSEOされたWELQ(運営:DeNA)の大きな問題

人は誰でも「情弱」になりうる

当時の私は、服薬と休養と規則正しい生活で治るのを待つしかないと分かっていても、目の前にある症状を何とかしたい一心で検索窓を叩いていました。
もしその頃にWELQがあったら、「いろんな検索結果で上位に出てくるメディア」として信頼して読んでいたかもしれません。

幸い現在は、興味のある情報を自由に追いかけ、必要に応じて取捨選択できるまで回復しています。
しかし病中を振り返ってみれば、簡単なメールを読むこともままならないほど思考力が低下していた時期がありますし、記憶力、判断力、集中力が正常に戻るまで何ヶ月もの時間が必要でした。また、病気特有の極端な思考の偏り、認知の歪みも長く残っていました。「早く治したい」という焦りや不安もあり、いわば“格好のカモ”状態だったと思います。

インターネット上の医療情報の信頼性

今回の騒動で改めて、情報リテラシーを高めて自衛することの重要性が説かれています。ネット上の情報利用は自己責任が大原則で、情報の信頼性については受け手が自ら判断する必要があるということです。

ただ、自らの経験を振り返って思うのは、普段リテラシーの高い人でも、病中は「情弱」になりうるということです。
本人は大丈夫でも、「良かれと思って」調べてくれる周りの人のリテラシーが低いパターンもあります。私も休職中、上司にお祓いや自己啓発的なオススメをいただいてストレスを溜めた記憶があります。

それに気づいた今、私ができるのは、まず自分の発信する情報に責任を持つこと。そして問題がある/信頼できる・役に立つと感じたことについて、小さくとも声をあげて共有していくといった草の根運動のようなことだけです。

以下は特定非営利活動法人日本インターネット医療協議会(JIMA)が公開しているインターネット上の医療情報の利用の手引きについて、ライターの朽木誠一郎さんが分かりやすく解説されている記事です。

周りの人と一緒に一読しておくと、いざというとき無責任なメディアに翻弄されずに済むと思います。

インターネットの可能性を濁さないで

藁をも掴む思いで情報を求めるとぼとぼくんの図
病中は沈んだ水底から藁をも掴む思いで情報を求めるもの

もうひとつ、今回の問題で悲しく思うのは、一部の心ない人たちのせいでインターネットの可能性が濁されてしまうということです。

具合が悪い時に、ふとんの中から藁をも掴む思いで手を伸ばした先が、一企業のお金儲けのために作られた無責任な情報だらけだったとしたらーー。

The power of the Web is in its universality.
Access by everyone regardless of disability is an essential aspect.
Tim Berners-Lee, W3C Director and inventor of the World Wide Web

Webの力はその普遍性にあり、障害の有無に関わらず誰もがアクセスできることがWebの本質的な側面であると World Wide Web の創始者で W3C のディレクター Tim Berners-Lee 氏は語っています。

PCデスクに向かえなくても、様々なデバイスから世界中の情報にアクセスできる時代です。検索エンジン側でも、ユーザーを有益な情報に導くために日々改良が重ねられています。

「ネット上の医療情報=怖いもの」、「SEO=お金儲けのためのずるいもの」ではなく、本当に必要とされるコンテンツが健全に行き届くために、インターネットができることはまだまだあると信じています。
ユーザーの方を向いていない「心ない情報」でその道が濁されることには、悲しみと憤りを感じざるを得ません。

そのテクニックを、届けるべき情報に

ライターの朽木さんは、別の記事でこうも語っています。

そもそも医療の専門家が発信する情報には、メディアの専門家ではないがために、わかりにくい・つまらない場合が散見される。医療の専門家側は、インターネットの普及に、まだまだ対応できていないと言える。
(中略)
そんな中で、キュレーションという仕組みが“読みやすくまとめ、編集・共有・公開する”という本来の目的を果たしていれば、医療者側と検索ユーザーとの橋渡しをする存在になることもできたはずだ。
医療情報に関わるメディアは「覚悟」を ー問われる検索結果の信頼性|Yahoo!ニュース 個人(朽木誠一郎)

確かに問題が指摘されるキュレーションメディアは、サイトのデザインも今風で、一見するとポイントが分かりやすくまとめられて「読みやすそう」という印象を受けます。
一方、医療の専門家や公的機関からの情報は、健康な時ならまだしも、弱っている時に読みこなすにはいささか骨の折れるものが少なくありません。医療情報だけでなく、傷病手当や自立支援医療の申請、健康保険の切替、失業保険の手続きなどに関するお役所情報も同様です。

キュレーションで整理された情報を求めるユーザーが存在するのも事実です。
狙ったキーワードで当てられるテクニックが、小難しい話を分かりやすくまとめる編集・デザインの力が、情報を必要としているユーザーのために使われることを願ってやみません。

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