私にとってのアクセシビリティ

最近 stand.fm という音声配信アプリを使って、気軽なアウトプットのトレーニングをしています。

普段は暮らしのことを中心に話していますが、Global Accessibility Awareness Day に合わせて「私にとってのアクセシビリティ」というテーマでお話したので、その文字起こしを掲載します。


こんにちは、デザイナーの間嶋です。今日はデザインのお話、アクセシビリティのお話をしたいと思います。

アクセシビリティという言葉を初めて聞いた方もいらっしゃるかもしれません。アクセシビリティというのはアクセス+アビリティ=アクセスできる能力とかアクセスできる度合いや幅広さのことをいいます。

毎年5月の第3木曜日は、Global Accessibility Awareness Day といって世界各地でアクセシビリティのことを考えてみようという日になっています。GAAD と書いて ギャード と読むそうなんですが、今日はその GAAD に合わせて「私にとってのアクセシビリティ」というテーマでお話してみようと思います。

アクセシビリティとの出会い

私とアクセシビリティの出会いは、 私とウェブデザインとの出会いにつながっています。

元々私は、エディトリアルデザインといって雑誌やカタログのデザインからデザイナーとしてスタートしました。
そこでは紙面をデザインする時に、全体の構成をつかんで、その中の要素がそれぞれどんな役割かを整理して、それにふさわしいビジュアルを作っていく…例えばタイトルはタイトルらしくとか、その要素が並列なのか親子関係にあるのかっていう構造を見た目に分かりやすく表して情報を伝えるっていうデザインを学びました。
この方法はその後紙媒体全般のデザインをするようになってからも役立っている考え方です。いわば私のデザインの基礎の基礎という感じです。

それからウェブのデザインを始めてみようと思った時に、まず HTML と CSS を学んだんですね。そこで HTML で文章にマークアップといって、これは見出しとかこれは本文とそれぞれ役割付けして、それに対して CSS で見た目を与えていくという方法を知ったときに「これって自分がやってるデザインと同じじゃん!」ってすごく感動したんですね。
しかも HTML と CSS は独立していて、たとえ CSS が外れて見た目がなくなっても、これは見出しですよって HTML でマークアップした要素の役割は変わらず保たれるって言うことにすごくロマンを感じたんです。
今まで紙のデザインでは、なんとか見出しが見出しに見えるようにビジュアルを作っていたんですが、ウェブではマークアップをすれば見た目がなくなってもその情報が伝わるっていうことがすごく面白いなって感じました。

あとはウェブを学び始めた頃にちょうど個人的にZINEを作りたいなと思っていて。なんですが、紙の冊子を作るとなると、印刷加工費とか作ったものの送料とか置いてもらう場所とか色々考えるとすごくコストがかかりますし、このZINEを手に取ってくれるのって結局私を知っている人とその周りちょっとぐらいかなと思って作るのをやめちゃったんですね。

そこで、ウェブで公開するんだったらカラーでもモノクロでも印刷費はいらないですし、ページ数が増えても問題ないし、公開したら世界中の人が見てくれる可能性もあるなと思って、代わりにホームページを作ったという経験があります。実際にブログを見た全く知らない海外の方から「この記事良かったよ」って英語でメールをもらってびっくりしたこともあります。 

こんな感じで、ウェブでデザインすることとかウェブで発信することの面白さを知ったんですが、当時勤めていた会社で教えてもらったのが Dreamweaver を使ったテーブルレイアウトだったんですね、当時と言っても201X年の話です。ウェブ業界にいらっしゃる方だったら苦笑いあるいは衝撃かもしれません。テーブルレイアウトっていうのは Excel 方眼紙でお絵かきするみたいな感じです。表組みを作って、そこに画像を貼り付けて、リンクはイメージマップを使って…って聞いて、私が勉強した HTML とか CSS って何だったんだろうと思いました。見た目がOK ならそれでいいのかな?って思って、でもその裏にあるぐっちゃぐちゃのコードを見て、これでいいはずないよね、ちゃんとマークアップする意味って何なんだろうってずっと苦しく思っていました。それに答えをくれたのがウェブアクセシビリティでした。

どうしてアクセシビリティに取り組むか

デザイニング Web アクセシビリティ』っていうピンク色の本があって、ウェブ制作の流れに沿ってアクセシビリティの問題と解決策を解説してくれている本で、それまで紙からウェブのデザインに来て、これでいいのかな?と感じていたモヤモヤとか迷いが一気に晴れたように思いました。

ちゃんと設計してきちんと作ることがより多くの人により良く情報を伝えることに繋がるんだっていう確信をこの『デザイニング Web アクセシビリティ』は与えてくれました。

しかもその「より多く」っていうのが、私が想像していた以上の沢山の人に伝わるっていう可能性を教えてくれました。
例えばスクリーンリーダーといって、ウェブサイトの情報を音声にして読み上げてくれるソフトを通して、目が見えない人とか見えづらい人にも情報が伝わることや、マウスが使えない人もキーボードを使ってウェブサイトを操作できることとか、ロービジョンの方が画面をすっごく大きく拡大してハイコントラストモードにしてウェブを見ていることだとか、それまで知らなかったウェブの使われ方、見られ方っていうのをアクセシビリティを通して知りました。

アクセシビリティに取り組んでいる方には、障害当事者の方との出会いをきっかけにアクセシビリティに取り組んでいるという方もたくさんいらっしゃるんですが、私の場合はアクセシビリティをきっかけに、それまで知らなかったユーザーの姿だったり、いろんな利用のされ方を知ることができました。

アクセシビリティは私にとって、どんな人がこんなふうに困るから、じゃあこうしようっていうのを教えてくれる、自分の思い至らなかった視点を与えてくれる存在です。

それからもう一つアクセシビリティの魅力なのが、アクセシビリティを高めることで、利用者全体のユーザビリティ、使いやすさが向上するっていうことがあります。例えば字幕って耳が聞こえない人のためにあると思われるかもしれませんが、 YouTube なんかを見ていて、字幕があることですごく内容が分かりやすくなるっていう経験は皆さんあると思います。

今回のスタエフでも試しに音声入力を使って文字起こしをしてみてるんですが、きっと音声で聞くよりも文字を読む方が楽だっていう方も障害の有る無しを問わずあると思うんですね。私も動画で情報を得るのが苦手なタイプで、テキスト版があったらいいのになってよく思います。

それからアクセシビリティに取り組むもう一つの理由として、自分が当事者だったことがあるからというのもあります。 私はうつ病になって結構長い間休職したり入院したりっていう時期があったんですが、それまで当たり前にできていたことができなくなってしまうっていうのが誰にでも起こりうるんだってことを感じました。

うつ病って気分が落ち込むだけかと思われるかもしれませんが、身体的にもいろいろ痛みとか症状が出たり、あとは記憶力や思考力にも影響が出るんですね。ウェブサイトの例で具体的に言うと、自分の意図しないタイミングで画面上のものがびゅんびゅん動いたら目眩がして見続けるのがつらかったり、フォームのラベルがプレースホルダーっていうのになっていて、入力し始めたら出てた文字が消えちゃうと、あれ?ここ何入力するんだっけ?ってなっちゃうみたいに困ることがあります。

今はもう元気なんですが、そういう一時的にとか、あとは歳をとったりで、何かしら今までできたことができなくなったとしても、でも決してその人自身が失われるわけではないっていうことを、その頃感じた悔しさとか悲しさから強く思っていて、 自分がデザインしたもので誰かを疎外するようなことは出来るだけしたくないなって思っています。

私の取り組み方

じゃあ私が今どうやってアクセシビリティに取り組んでいるかというと、いわゆる「アクセシビリティ対応案件」何か規格への準拠が要件に挙がっているお仕事っていうのは今のところほとんどありません。今お仕事をさせてもらっている普通の案件で、アクセシビリティを高める方法を取り入れているっていう感じです。

なんでわざわざ言われてもないのにやるのかって言ったら、それは私にとってのデザインそのもの、使う人や情報を受け取る人の目線に立って、伝えたいことにふさわしい形を与えるっていうこれまでやってきたデザインの延長線上にあるものだからです。アクセシビリティのスペシャリストになるつもりは全然なくて、あくまでいちデザイナーとして、情報を伝えるためにできることをやるっていうスタンスです。

時々私のこういったSNSでの発信とか活動を見て同業の方からお声がけをいただくこともあるんですが、私がやっているのはごく初歩的な、知って、ちょっと手間をかければ誰でもできるようなことなので、私の専門分野ではなくて、ウェブ制作をしている人みんなの基礎知識としてアクセシビリティが捉えられていってほしいなと思っています。

アクセシビリティって最後の工程のエンジニアさんが後から頑張って対応するものではなくて、上流工程の設計から意識することで解決できる事ってたくさんあるので 、ディレクションをする人やデザインをする人にももっと知ってほしいなと思います。

というわけでこれからもアクセシビリティを学んでいろんなヒントをもらいながら、取り組んだり周りの人に伝えていったりしたいと思います。

明日は GAAD

今年は、明日 5月20日に日本でも GAAD Japan というオンラインのセミナーイベントが開催されます。一日中アクセシビリティに関するいろんな話が聞けるイベントで、いつでも入退場OKで、参加費も無料です。概要欄に URL を貼っておきますので、ご興味のある方はぜひ覗いてみてください。それでは聞いていただきありがとうございました。