雨上がりの点字ブロック

コード化点字ブロック体験会に参加しました

2024年2⽉17⽇にオーテピアで開催された「インクルーシブデザインについて考えよう!」 ~講演会とコード化点字ブロック体験会に参加しました。

コード化点字ブロックの研究開発を行なっている金沢工業大学の松井くにお教授からお話を聴くことができました。

2つの課題から生まれたコード化点字ブロック

「コード化点字ブロック」をご存じでしょうか? 点字ブロックに簡単なマークをつけてコード化し、スマホアプリで読み取ることで進行方向に応じた音声案内を提供する仕組みです。

2019年に金沢で生まれ、 高知では2023年2月からオーテピア声と点字の図書館に設置されています。

点字ブロックから得られる情報は2種類

歩道や駅など街のあちこちで視覚障害者の歩行を誘導している点字ブロック。実は点字ブロックが伝えている情報には次の2種類しかありません。

誘導ブロック:4本の線上の突起が並行に並んだブロック。
警告ブロック:点状の突起が5×5個並んだブロック。
  • 誘導ブロック:進行方向を示す。
  • 警告ブロック:注意を喚起する位置を示す。階段や横断歩道の前、駅のホームの端、誘導ブロックが交差する場所、案内板や建物の入り口の前などに設置されている。

誘導ブロックに沿って行けば進めることと、警告ブロックの先には「何か」があることはわかりますが、何があるのかという情報は得られません。

見えているのに見えていない点字ブロック

点字ブロックの上に自転車が放置されていたり、看板が置かれていたり、はたまた街頭演説をしていたり……。目が見えない、見えにくい人の安全な歩行を誘導する点字ブロックですが、目の見える人にはまるで見えていないかのように扱われていることがしばしばあります。

目の見える人は点字ブロックの恩恵を受けることが少ないので、その重要性に気づかず、道の一部のように扱ってしまうのかもしれません。では、目の見える人にも便利なものになったらどうでしょうか。

この2つの課題から生まれたのがコード化点字ブロックです。2022年には次のような評価を得てグッドデザイン賞を受賞しています。

既存の点字ブロックを張り替えることなく、比較的容易な設置によって音声案内情報の機能を実現できる点が評価できる。また、視覚障がい者だけでなく、健常者にとっても案内情報が得られるメリットがあるため、点字ブロックが特別な人のためのものという認識を変える提案となっている点も好ましい。実証実験の段階であるため、より広範囲の導入に向けて検討を要する点もあるが、今後の社会において重要な役割を果たすことが期待される。

2022年グッドデザイン賞「音声情報提供システム コード化点字ブロック」審査委員の評価

コード化点字ブロックの案内情報を考えてみよう

松井先生の講演に続いて、コード化点字ブロックの案内情報を考えるワークショップが行われました。

現在オーテピアには、館内の12ヶ所にコード化点字ブロックが設置してあります。今後さらに施設の外回り10ヶ所に新しく設置をする予定です。今回のワークショップでは、グループごとに1ヶ所のコード化点字ブロックを担当し、どんな案内情報を入れるかを考えました。

コード化点字ブロックの仕組み

コード化点字ブロックは、警告ブロックに直角三角形とリング状のマークを付けて作成します。既存の点字ブロックを利用するため、設置や保守にかかる費用を抑えられるのが特徴です。

写真:コード化点字ブロックのサンプル。黄色い警告ブロックに黒い三角形のシールが1つ、リング上のシールが3つ貼ってある。

三角形のマークは方向を表しています。三角形の向きによって、ブロックの4方向からの情報を出し分けます。また、三角形を非常口や避難所に向けて設置することで、災害時には避難経路の目印としての役割も果たします。

リング状のマークはコード番号を表します。5×5の突起にそれぞれ数字が割り当てられており、リングの付いた突起の数字の合計がそのブロックのコード番号になります。数字の組み合わせは3000万種類以上あり、エリアごとにコードを登録できるようになっています。

図:コード化点字ブロックのマークの役割と、4つのアングル

案内情報には4つのジャンルを登録できます。

  • 一般:簡潔な案内情報(例:5メートル先にトイレがあります。)
  • 詳細:詳細な案内情報(例:5メートル先、左が男子トイレ、右が女子トイレ、直進が多目的トイレに分かれています。)
  • 避難:避難経路や避難所の案内情報
  • 専用:施設のイベントなど発信者からの案内情報

利用者はスマホアプリ「Walk And Mobile」を使って点字ブロックのコードを読み取ります。アプリでは情報のジャンルを切り替えたり、案内テキストの表示サイズや音声速度を調整したりできます。

利用者目線で必要な情報を考える

コード化点字ブロックの案内情報は、次の「型」をもとに作成していきます。

ここは、〜〜です。(現在地の情報)
前方は、〜です。右は、〜〜です。左は〜〜です。(行き先の案内)

1ヶ所の案内情報を考えるだけでも、その場所をどう表せば良いか、どこまで先の情報を含めれば良いか、方向によって情報の優先順位を変えるなど、予想以上に考えることがありました。実際に置かれる場所を見に行ったり、グループで相談したりしながら進めていきました。

案内文作りに悩んでいたところ、「あまり形式ばった表現でなくても、聞いていて楽しくなる遊び心を加えても良いよ」とのアドバイスをいただきました。金沢の観光地では、その場所のキーワードが聞けるブロックもあるそうです。

今回は詳細ジャンルと一般ジャンルの案内文を作成し、アングルごとにGoogleフォームで情報を送信しました。集まった情報を松井先生がその場でブロックに登録してくださり、アプリを使ってコードを読み取れるようになりました。

コード化点字ブロックの読み取りアプリの画面キャプチャ。上部にコードの読み取り表示があり、その下にコード番号、アングル、案内情報が表示される。「ここはオーテピア遊歩道の中の橋入り口です。オーテピアの1階には声と点字の図書館があり、さまざまなバリアフリー図書が揃っています。右に南入口があります。前方は帯屋町アーケードです。左は車道です。」

各グループで作成したコード化点字ブロックを現地に置いて読み取りレビューを行いました。コード化点字ブロックを設置するときは、通行者で隠れたりブロックが汚れたりしても読み取れるように、同じブロックを2つ以上並べて置きます。

視覚障害のある方が案内を聞いて「盲導犬トイレがあるなんて知らなかった!」と楽しそうに話していたのが印象的でした。目の見える人が無意識に取捨選択している情報の中にも、見えない人が欲しい情報がたくさん含まれていることに気づきました。

写真
松井教授とコード化点字ブロックを囲む参加者(オーテピア館内1階エントランス)

声と点字の図書館では、入り口からカウンター窓口やトイレまでコード化点字ブロックが設置されています。トイレの前のブロックでは、トイレ内の使い方も案内されていました。

コード化点字ブロックのコードは、点字ブロックを使わず紙にプリントしたものでも読み取れます。2024年能登半島地震では、避難所の壁にコード化点字ブロックをプリントした紙を貼ることで、視覚障害のある人も音声案内を頼りに一人で避難所内を移動できるようになったそうです。

「ひとりで移動できない」避難所で想像もしなかった苦労…珠洲市 視覚障害 コード化・しゃべる点字ブロック | NHK WEB特集 令和6年能登半島地震

金沢では、コード化点字ブロックのある場所をGoogleマップで検索できるように整備が進んでいるそうです。今はブロックを見つけてアプリをかざすという一連の操作が必要ですが、全国のあちこちに設置されて、よりスムーズに活用できるようになると良いなと思いました。

松井先生、W&Mシステムズの皆さん、声と点字の図書館さん、高知でコード化点字ブロックの先進的な取り組みに触れられる機会をありがとうございました!

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